技術と思考

浅田彰氏の公開講座、最終回のゲストスピーカーは岡崎乾二郎氏でした。ポスト・モダンダンスのおばあちゃんコレオグラファートリシャ・ブラウンのダンス映像からはじまり、ダダイズム、ロボット、人工知能などについて語る2時間半。トリシャ・ブラウンの踊りは完璧な振り付けのもとで作られているそうなのですが、ステージでは同時にロボットを即興で操っています。つまりそこでは「完全なコレオグラフ」+「即興の舞台装置」という一見矛盾した関係が生まれていて、その主体と客体の入れ替わりが、さらに入れ替わるということが繰り返されているように見えました。この「ダンサーと機械」の関係を、岡崎氏は「主人と奴隷」の関係だと言います。奴隷は自分の意思を持たず、主人の思うままに動くけれど、主人は奴隷がいないと自分の意思を表現できません。つまり、本当は奴隷の行為なのに、それこそが自分の行為だと思い込むということで、主客が入れ替わるというわけです。コンタクト・インプロヴィゼーションなんか、まさにそんな関係を表しているし、私たちの日常そのものも、同じだと思えてきます。獲得しきっている99%の中で、残りの1%を試みること。そんなことの大切さを、ふと思い出した講義でした。