越境する伝統

仕事場の地下ホールにて、渡邊守章氏の講演「越境する伝統−観世寿夫の賭け」がありました。観世寿夫さん、70年代に前衛芸術とのコラボレーションを数多く残した珍しい能楽師で、その貴重なフィルムをいくつか観ることができました。なかでも『バッコスの信女』(エウリピデス作、鈴木忠志演出)は、ディオニュソス演じる観世さんの能楽的な台詞回しや、腰を振りながら行進する半裸の舞踏家たち(コロス役)が、とてもギリシャ悲劇とは思えず、ものすごくかっこよかったです。観世さん、いろいろな意味で伝統を越境したんだなあと、しみじみ感じた3時間でした。